紀州ウスイにこだわり

圃場改造で防除に効果
JAや仲間と研究にまい進
紀州ウスイにこだわり  田辺市芳養町の木下恵さん(60)は、ハウス3棟でつくるウスイエンドウの地域ブランド「紀州ウスイ」に力を入れる。「先入観を持たず良いと思ったものは取り入れる」との信念のもと、時には思い切った改造も行い、防除と収量アップに努めている。
 木下さんは13年前、勤めていた会社を退職し、妻の実家の農業を継いだ。主力は約2㌶の梅と水稲だが、農閑期にできる作物はないかと、「紀州ウスイ」の栽培を始めた。
 初年はハウスの設備が不十分だったため病気が発生し、挫折を味わったという。そのため新品のハウス3棟とボイラーを購入して温度管理を徹底し、営農指導員と協力しながら病気の研究を始めた。
 「初心者で予備知識がまるでなかったのが逆によかったのかもしれない。先入観なく、良いと思ったことはなんでも取り入れた」と振り返る。地元生産者をはじめ、県内の主産地であるみなべ町や印南町、白浜町などの農家と共に勉強会や試験場の見学を行った。
 収穫期は1月中旬から5月中旬。ツルが密集しないよう12月までに元気な芽を選び出し、1本だけ大きくするのが重要で、それをいかにうまく仕立てるかが、収量を左右するという。
 就農当初、木下さんはハウス1棟につき4畝で栽培を始めたが、なんだか息苦しいと感じた。「人間が息苦しいと感じるなら、マメだって苦しいはずだ」と思い切って3畝にしたところ、ゆとりができてサヤが大きく育った。風通しも確保でき、病気も少なく秀品率も上がったという。
 ツルの先端を途中で折り返さず、ハウスの天井につくくらい高く仕立てるのも木下さんのこだわり。収穫は大変になるが、ツル同士が重ならないので病気になりにくく、1畝減らした分少なくなる収量もカバーできる。今年はハウス3棟(7㌃)で1・9㌧の収穫を見込んでいるが、同じ面積で作った場合1・6㌧が目標収量というので、作柄は上々といえる。
 田辺市芳養地区のマメ部会長も務める木下さん。全盛期は7件ほどのマメ部会員がいたが、高齢化に伴い担い手は減少しているという。しかし農閑期の収入につながるという利点は大きく、地域のマメ栽培を盛り上げるためにも生産者を増やしたい考えだ。
 木下さんの心構えは「どれだけ気を付けても必ず病気は出る。頭が真っ白になることもあるが、少しでも前進することが大事だ。試行錯誤を始めると、面白くなる。どうにもならなくても、どうにかならないかとあがくことだ」。
 昨年は、マメ類に珍しく「べと病」に見舞われた。まさかそんなことがあると思わなかったが、早期に指導員に相談して対策を打ったのが幸いしてか、今年は順調に生育したという。
 「次から次へと問題が出てくるけど、原因を削っていき、立ち止まらないようにしたい。失敗するだけ成功に近づいていくのだと信じて、今後も研究を続けたい」と、強い決意を語った。