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梅酢にインフル抑制成分

消毒薬等への商品化に期待
抽出のポリフェノール
研修成果を発表する小山一学長(写真左)と協議会関係者(11月8日、田辺市役所で)
 田辺市とJA紀南でつくる「紀州田辺うめ振興協議会」(会長=真砂充敏田辺市長)は11月8日、梅干しを漬けた時にできる梅酢から抽出したポリフェノールにインフルエンザウイルスの増殖抑制や消毒作用があるとの研究成果を発表した。今後、消毒薬やうがい薬、抗ウイルス食品などの開発をめざし、特産の梅の振興につなげたい構えだ。

 研究は県果樹産地再生緊急対策事業(平成24年~25年度)を活用。和歌山信愛女子短期大学の小山一学長(ウイルス学)の研究グループが、わかやま産業振興財団の医農連携コーディネーターで梅酢ポリフェノールの抽出に成功した三谷隆彦さんの協力で行った。
 梅酢ポリフェノールは、梅酢を特殊な樹脂に吸着させて精製する。クエン酸や塩分は除去している。果実重量に換算して0.1%の量が含まれ、そのうち2割は梅酢の中にあるが、8割は梅干しに含有して残る。
 研究では、犬の腎臓由来の細胞にA型インフルエンザウイルスを吸着させ、梅酢ポリフェノールを入れて培養したところ、入れない場合に比べウイルスの増殖が100分の1に抑えられる「抗ウイルス作用」が確認された。
 梅酢ポリフェノールとインフルエンザウイルスを体温に近い30度で5分間保温する試験では、感染性ウイルスの量が1000分の1に減るという、優れた「ウイルス不活性(消毒)作用」が認められた。これらの試験は、梅酢ポリフェノールの濃度が高いほど効果が高かった。
 一方、梅酢ポリフェノールの添加による細胞への障害作用は極めて低く、ウイルスに対する有用な作用がありながら、安全性も高いことが分かった。
 小山学長は「A型以外にも効果はあると考えられる。ウイルスの量を減らせば、感染、発症、重篤化の危険が減る。特に細胞への影響が少なく、安価な感染予防の商品化が期待できる」と語る。
 真砂市長は8日の記者発表で「結果は産地の財産だ。今後も梅の機能性研究を深め、梅の振興と消費拡大につなげたい」と話した。
 また、小山学長らのグループは、A型インフルエンザ以外にも、梅酢ポリフェノールが口唇ヘルペス、ポリオ、手足口病、ノロ等のウイルスの増殖を抑制する効果も確認済みだ。
 田辺市とJA紀南は今年4月に「抗ウイルス物質及びこれを含む医薬等」として特許出願しており、今後は人への影響も研究し、JA紀南が商品化の検討に入ることとなっている。