JA紀南広報誌

2017年1月号p03-01

2017年1月号もくじ

平成29年新年のごあいさつ  

元気な農業・地域・JAづくり
「3つの柱」目標に力の限り努力  

代表理事 組合長 本田 勉

 新年明けましておめでとうございます。組合員はじめ地域の皆様には、心健やかに輝かしい年の初めをお迎えのことと、役職員一同心からお慶び申し上げます。
 私も生まれ育った故郷の初日の出を、身の引き締まる想いで見ることができる幸せを体中で受け止めています。この恵まれた自然環境をいつまでも守るためには、第一次産業の農林漁業が果たす役割と、その存在が何よりも大切なことを広く知ってもらい、地域の方々の協力を得られるようにしなければと決意を新たにしています。

 私たちは、経済のグローバル化にともない、資本主義の行き詰まりを表すようなかつてない低金利を経験しています。世界の政治は景気低迷の打開策として、経済のグローバル化とは逆の立場をとろうとしています。イギリスのEU離脱、アメリカ次期大統領・トランプ氏によるTPP離脱表明、イスラムの排斥やメキシコ国境の壁設置などがそうです。
 これまで人類は、限られた地球の資源を食い潰して発展してきましたが、全てがその恩恵を受けた訳でなく、先進国といわれる国が後進国を資本主義に巻き込む過程で成長の果実を手にしてきました。戦後日本もその恩恵を受け、「一億総中流」の時代を経験しました。しかし、成長著しかった国々もGDPが低下してきた現在は格差が広がっています。こうしてみると、経済は必ず成長が止まる時が来るということが分かります。
 人類は、積み木遊びと一緒で、ある程度積み上げると、一度リセットして初めから積み直すことを繰り返します。戦争もリセットの一方法ですが、経済ではバブルとその崩壊がそうです。金融工学を駆使して積み上げたアメリカのバブルが破綻したのがリーマンショックで、世界中に大きな傷跡を残して積み木は崩れました。このような愚かなことがなぜ繰り返されるのか? 人類の持つ欲望と競争本能のなせる業でしょう。
 日本政府が奨励するのも自由競争です。強い者、体力に勝る者が一人勝ちする新自由主義で、結果、大多数の国民が泣くことになります。経済学者の水野和夫さんは「政治がグローバル化した経済に飲み込まれている。一国だけの政治力では国境を越えて自由に動き回るマネーを制御できなくなっている」と述べています。
 本来政治とは、富の再配分が目的のはずです。故大江敏一先生は、若き日の私にこう話されました。「本田君、政治とは、光の当たらない所に光を当てるのが仕事なんだよ」と…。

 農業・農協改革が声高に語られていますが、政府が介入してやるべきことでしょうか? そもそも農業は自己責任の世界で、誰かに責任転嫁できる職業ではありません。「生産物は一円でも高く、一円でも安い資材を」というのは資本主義そのもので、協同組合である私たちJAグループの仕事は、消費者が求める物を生産に見合う適正な価格で提供することです。
 コスト低減の名のもとに全てを効率で判断し、肥料の銘柄集約などが検討され、苦労して開発してきた地域の特色あふれる技術が消し去られようとしています。農業はいろいろな形があって良いので、大規模で農業を営む方はコストをぎりぎりまで切り詰め、規模は小さくても特色のある経営を目指す方はまた違った考え方をするのです。どこを切っても同じ金太郎飴ではないのです。
 規模や経営内容に違いはあっても、皆同じ組合員ですから、JAはどちらにも対応する必要があります。コスト低減のためには、肥料などの銘柄の集約は必要ですが、一方で特色ある産地を守るために品質を重視する物も必要で、安さを追求した物までの品揃えが必要です。経営に応じて資材を選んでもらえるようにするのが協同組合たるJAの役目です。

 「農業を成長産業にする」がアベノミクスのうたい文句ですが、果たしてそうなり得るのでしょうか? 自然のご機嫌如何で豊凶の差が大きく、世界の穀物市況が暴騰・暴落を繰り返し、私たち国民の台所を直撃しているのは、皆さんもよくご存じでしょう。政府の目指す農業は、世界市場に打って出る企業的な農業です。安倍首相のよく言う「故郷の原風景を守る農業」では決してないのです。
 元々、日本の農業は家族経営で林業や漁業も兼営していました。今は機械や技術が導入され、規模の大きな専業農家も増えました。生活は近代化し、ガスや電気の普及で薪を取りに山に入る人もいません。里山は荒れ鳥獣被害も増えました。
 二階先生が以前「最初に国会で鳥獣被害を取り上げたとき、どこの国の話だと取り合ってもらえなかった」と話されていましたが、今はジビエ料理がテレビ放映され、隔世の感があります。それだけ被害が拡大した訳ですが、特に過疎地では農業の大きな阻害要因となっています。行政とJA・農家が一体となって、対応しなければならない大きな課題です。
 このように大自然と共存して生産する私たちの農産物は、国境を越えて電子空間を飛び回る姿の見えないマネーではありません。人間にとって命をつなぐための食を支えるという非常に大切な部分を担う農業を、誇りをもって振興したいと思います。

 JA紀南は今年度、第4次「中期経営計画」と第2次「地域農業振興・再生計画」を策定しています。
 中期経営計画は「元気な地域農業づくり」「元気な地域社会づくり」「元気なJAづくり」の3つの柱を基本に、向こう3カ年の進むべき道標として私たちの拠り所となるものです。
 「元気な地域農業づくり」は、地域農業の振興と農業所得向上への挑戦がスローガンです。農業所得向上へ、組合員・JAが一丸となって新たな挑戦を始めます。
 「元気な地域社会づくり」のスローガンは、事業と活動を通じた組合員・地域とのつながり強化への挑戦です。安心して暮らせる豊かな地域社会を目指し、皆が一緒になって高齢化が進む地域の暮らしを支えたいと思います。
 「元気なJAづくり」は、農業と地域を支える健全な経営の確立への挑戦がスローガンです。組合員の皆さんと共に、さらに魅力あふれるJAの実現を目指したいと思います。
 JAは健全な経営が確立しないと組合員や地域の皆さんに還元する財源が確保できません。異常な低金利が続く中、経営は茨の道が続くことと思われますが、組合員や地域の皆さんと同じ方向を向いて進みたいと考えています。
 「愛するとはお互いに瞳を見つめ合うことではなく、同じ方向を見られることだ」。誰の言葉だったか忘れましたが、JAと組合員・地域の間にも当てはまる言葉です。3つの柱を目標に皆で力の限り挑戦していきましょう。
 本年もよろしくご協力・ご指導のほどを心からお願い申し上げ、ごあいさつといたします。(平成29年 元旦)

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