JA紀南広報誌

2016年8月号p03-01

2016年8月号もくじ

農を耕し、地域を起こす『農人』【No.36】  

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田辺市稲成町(中央支所管内)
谷口 文治 さん

 6月にJAの直売組織連絡協議会の新会長となった谷口文治さん。「野菜がメインではない自分が」と謙遜の表情だが、野菜への情熱が他より劣っている訳ではない。梅、ミカン、水稲、野菜と器用にこなす谷口さんに迫った。

何を作っても「手間暇かけて」
直売所出荷は大きなチャンス  

 「皆元気ならこそできる農業経営」。谷口文治さんはそう表現する。南高を中心に古城、パープルクィーンなどの梅が1・5㌶、極早生・早生の温州ミカンを軸にかんきつ類が1・5㌶、借地の水稲が1・5㌶とその裏作野菜が30㌃、他にハウスイチゴも8㌃で続けている。これらを妻の浩子さん、後継者の雄哉さん・豊子さん夫妻で「段取り重視」のもと切り回す。
 40年近く前、南部高校の園芸科を出てすぐに滋賀県にあるタキイ種苗の園芸専門学校で1年間、研修生として勉強した。「農業を継ぐのは折り込み済みだった」と言い、その基礎を築いた。就農後は南部高校の農業実習の非常勤講師を2年間務め、教える立場からも農業の知識・技能の向上を図った。
 就農時、施設園芸に夢を馳せ、ハウスを建ててナス、キュウリなどに挑戦した。最後に行き着いたのは今も続くイチゴだ。当時は地域でもミカン、梅などの永年作目の拡大志向が強く、谷口さんもブームに乗って梅を増反したが、「果樹だけでは所得的に厳しい」と、経営から野菜やイチゴ、水稲を外すことはしなかった。
 梅、ミカン、野菜・イチゴ、水稲、それぞれの経営に対するウエイトはほぼ4分の1ずつ。危険分散を踏まえた多品目栽培だ。
 十数年前からは農産物販売にも新しい動きが出始めた。市場販売ではない直売だ。谷口さんもAコープが始めた直売コーナーの「食鮮市」、田辺市が大型給食センターを設置した際の「JA学校給食食材」、平成19年のファーマーズマーケット「紀菜柑」と、次々に販売先拡大の機会に乗っかった。
 「いろいろやって大変なのはわかるが、一家を養っていくため、とにかくまめに動かんとあかん」。三世代同居の中、息子夫婦の生活も見越して、直売所出荷を大きなチャンスと捉えた。
 水稲裏作の野菜はハクサイ、キャベツ、ダイコンなど、ミカン収穫や梅の剪定をしながらでも管理のしやすい品目を中心に選ぶ。ピーク時に20㌃あったハウスイチゴは、今は8㌃に減らし「紀菜柑」を中心に出荷している。
 水稲は籾すり・乾燥施設を備えたため自作以外に稲刈り、脱穀などの作業請負いも始めている。果樹はスプリンクラー設置で省力化を図る反面、ミカンのマルチ被覆で高品質栽培をめざしている。
 他から「何もかも、えらいなあ」と言われることもあるというが、谷口さんにとって果樹から野菜までの“総合園芸”は「何の抵抗感もない」と言い切る。農業を続けて38年目だが、「何を作っても手間暇かけないと、良い物はできん」、これは確信している。
 農家の所得拡大が叫ばれる中、JA紀南に対しては「農作物の売り方も生産資材の仕入れも農家をリードするJAであってほしい」と注文しつつ、JAの直売所や特販流通の展開などが農家に役立っていることを十分認めている。
 農業へのモチベーション(やる気)衰えることなしの谷口さん。「最低あと20年は現役の気持ちだ」と、自分の背中を見て後継者が育ってほしいとの願いが漂っている。 (文・写真=山本和久)

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