JA紀南広報誌

2016年6月号p07-01

2016年6月号もくじ

きずな   

組合長 本田 勉
協同組合の役目  

 2015年(平成27年)の国勢調査によると、日本の総人口が調査開始以来、初めて減少に転じたことが新聞報道された。一方で高齢化が着実に進み、経済は逼塞(ひっそく)している。農産物価格は、消費の減退も相まって低迷したままである。そこへTPPへの加入問題、農協法の改正とまさに農業にとっては〝泣き面に蜂〟の様相である。
 さて、人口減少は日本の経済に、はたまた農業にどのように影響してくるのだろうか?
 人口の減少は、一人当たりの消費が伸びない限り、全体の消費量は減少の方向に作用するのは自明の理である。また、高齢化が進むと、さらに輪をかけて消費が減退することになる。
 政府はこの経済の閉塞感を一掃するため、TPP批准を進めようとしているのである。
 しかし、過去の戦争の推移をみると、経済発展を希求するあまりの植民地政策に帰結する。TPPも武器を使わないものの中身は戦争であり、経済の植民地政策といえるのではないだろうか。強大国が弱小国を餌食にしてさらに肥え、太る構図がそこには垣間見える。
 そして、経済界を席巻する新自由主義の存在である。力の弱いものも強いものも、規制を無くし市場で自由に競争させることで経済は発展するとの考え方である。
 ために、相互扶助を基本理念に掲げる農業協同組合は邪魔になる。「農協(JA)はTPPには組織を挙げて反対しているけしからん組織だ」というのである。
 同じように、官が民営事業を圧迫することは自由競争を妨げるとの理由で、郵政の民営化が行われた。事業を分割して株式会社化された結果、どうなったのだろうか?
 日本郵政の株式上場が行われた時の社長の記者会見の言葉が耳を離れない。曰く「経営をしっかりして、株主に最大の配当をする」と。株式を公開した以上、社長としては当然と言えば当然すぎる言葉であるが、そこには国民のための事業であるという視点が欠けているように思う。
 翻って、農業・農協改革が叫ばれて、農協を解体するがごとき改正(改悪)農協法が施行された。
 「悪法も法」と言って甘んじて処刑を受け入れたソクラテス、それを例に引いて栄養失調で死亡することも厭わなかった戦後食糧難の時代の裁判官、山口良忠判事。いま私たちは同じ立場に立たされたと感じている。
 しかし私たちは、将来にわたって協同組合運動を継承し発展させなければならない。今は新自由主義が世の春を謳歌しているが、時代はいつも時計の振り子のように右に左に振れて時を刻む。ちょうどよい位置は通過点でしかなく、いつも振り切れないと戻らない。
 今が試練の時と耐えて、協同組合の本旨を忘れないように、組合員や地域の皆さん、役職員一丸となって協同組合運動にまい進したいと考えている。
 そして、食と農の大切なことを発信し続けると共に、命を繋ぐ食糧の生産に携わっていることの誇りを忘れないようにしたいものだ。

大西郷の矜持  

 大西郷こと西郷隆盛は皆さんよくご存じの明治新政府樹立の立役者だが、決して幸せな最後ではなかったことも、彼の人となりとして語り継がれている。大西郷には、いろいろなエピソードが伝えられているが、私は次にお示しする話がその性格をよく表していて好きで、記憶に残っている。
 ある雨の日、西郷が宮中から退出する際、例によって着物姿でしかもいつも履いている下駄をなくして裸足であったため、門番に不審人物と思われ足止めされた。西郷は「陸軍大将」と名乗ったのだが門番に信じてもらえず、仕方ないので雨の中、知人が通りかかるのをひたすら待ったそうだ。
 その理由が驚きだ。ここで腹を立ててことを荒立てては門番が処罰されると考えたというのだ。弱者の立場を慮った(おもんばかった)西郷の面目躍如といったところだろう。
 「敬天愛人」の西郷さん、器の大きさは、我々には到底及びもつかないことであるが、この国のリーダーたちに、その爪の垢でも煎じて飲ませたいものである。

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