JA紀南広報誌

2016年5月号p03-01

2016年5月号もくじ

農を耕し、地域を起こす『農人』【No.33】  

初調査以来、農家が箱わなで捕獲したアライグマを引き取りに来た鈴木和男さん

田辺市ふるさと自然公園センター
鈴木 和男 さん

 果樹や野菜への鳥獣害が猛威を振るっている。イノシシ、シカ、サルと並びアライグマもやっかいだ。農家参加型の捕獲を提唱し、自ら個体の調査を続けるのは、ほ乳類研究者の鈴木和男さん。その数は何と2千頭を超した。

廃棄物は動物にはご馳走だ!
アライグマ調べ続けて2千頭  

 アライグマによる農作物被害が旧田辺市エリアで急増したのは平成14年の夏頃からだ。雑食性であり、ミカンや柿、スモモなどの果樹類、スイカ、トウモロコシなど野菜類の被害が後を絶たず、住居侵入といった事例も報告された。
 農家の被害相談を受けた田辺市とJA紀南(それぞれ合併前)は、「田辺市鳥獣害対策協議会」を立ち上げ捕獲活動に乗り出した。その際、調査研究を委託したのが市内出身で、ほ乳類研究者である鈴木和男さんだった。
 「元々動物が好きだった」という鈴木さん。昭和50年に入学した東北大学で、カモシカや全国的に増え始めたシカを調査し、卒業後も研究室で活動を継続した。
 平成7年からは青年海外協力隊の隊員としてアフリカのザンビアでカバを調査、帰国後は香川県の小豆島でシカ、再びアフリカのナミビアに出向くなど、ほ乳類の調査経験を積んだ。
 13年前、たまたま田辺に帰って来た時、アライグマの被害が大問題になっており、地元の先輩の紹介で調査の委託を受けた。対策主体の鳥獣害対策協議会が、農家に箱わなでの捕獲を呼びかけ、捕獲した個体を鈴木さんが調査する仕組みができた。最終目的は移入種であるアライグマの根絶だ。今年3月31日までの捕獲頭数は2126頭にのぼる。
 JA紀南の支所などに捕獲したアライグマが持ち込まれると、鈴木さんが出向いて安楽殺処分し、持ち帰って、性別、体長・体重のほか、妊娠などの繁殖状況も記録する。自ら調査する他、必要な試料を採取して、遺伝子分析やメスの繁殖履歴、感染症について、専門の研究者に検査分析を委託することもある。
 鈴木さんはこれまで積み重ねた2千頭以上の捕獲実績について「増え方にブレーキをかける効果は確実にあった」と見る。
 一方で、鈴木さんが最近、気になっているのが、これまで毎年150頭前後で推移していた旧田辺市エリアの捕獲頭数が、昨年10月以降、1カ月で30頭を超える月が多くなり、年換算で400頭近いペースに激増していることだ。
 「その原因はまだ見出せない」としながら、要因として、「妊娠・出産の繁殖率が上がり、生息数自体が増えているのか、あるいは、ナラ枯れなどでドングリ事情が悪化し生息が耕作地帯に近づいているのかも」との仮説を立てる。
 鈴木さんは、アライグマの他、毛が抜けた疥癬(かいせん)タヌキや外来種のハクビシンも調査するなど、調査対象を広げている。
 農業での鳥獣害対策は「獣種に問わず共通点がある」と鈴木さんは言い、筆頭として動物を農作物に餌付かせない手立てをあげる。
 「廃棄作物の取扱いは注意してほしい。商品価値が無くても、野積みした廃棄作物は動物にとってはご馳走で、その食べ物に餌付くと、動物の暮らしが劇的に良くなり、生息数が急増する」。
 銃やわなによる捕獲、電気柵やネットによる防護も重要としながら、「餌付かせて生息数を増やさないための対処が大事だ」と訴え続ける。(文・写真=山本和久)

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