JA紀南広報誌

2016年4月号p03-01

2016年4月号もくじ

農を耕し、地域を起こす『農人』【No.32】  

画像の説明

田辺市稲成町
楠本 健治 さん

 彩り良く店頭で幅をきかせるイチゴ。福岡「あまおう」も有名だが、和歌山では県開発の「まりひめ」の知名度が上がっている。JA稲成イチゴ研究会は「まりひめ」に栽培を統一し地元に出荷する。楠本健治さんはその会長だ。

「まりひめ」味良し、形良し
ハウスイチゴと梅で複合経営  

 「子どもの頃から両親がイチゴを作っていて、僕も出荷箱を組み立てるなどの手伝いをしたものだ」と楠本健治さん。楠本家のイチゴ作りは約40年になる。
 イチゴはトンネル栽培が主流だった時代、南部高校を出たばかりの父・康夫さんが施設園芸に夢を馳せ、最初はメロンに挑戦し、4年後にイチゴ栽培に切り替え、これまでずっと続いてきた。
 楠本さんは3人兄弟の長男だ。大学を卒業して1年後の23歳で就農した。親の強いすすめがあった訳でも無い。「スッと農業の道に入ったかな」と振り返る。
 農業は、「南高」を中心に青果出荷の梅が1・2㌶、あとは13㌃のハウスイチゴだ。イチゴは夏場の育苗作業、9月以降に定植、収穫は12月から翌年5月頃まで続く。
 「梅の作業がイチゴの育苗や定植、収穫とかち合うことが少なく、組み合わせは合っている」との理由で、梅とイチゴの複合経営は父が始めて以来変わっていない。
 JA紀南には、JA合併前から稲成イチゴ研究会があり、現在、楠本さんが会長を務める。会員は5人。JA稲成店で集荷し、地元市場や直売所「紀菜柑」にJAのイチゴとして共同販売する。
 平成26年産からは栽培品種を県のオリジナル品種「まりひめ」に統一し、今年産で2年目を迎えている。「まりひめ」は県農業試験場が開発し平成22年に品種登録された品種だ。「章姫」と「さちのか」の交配種で、関係者に名称を公募し、紀州手まりにちなみ「まりひめ」と名づけられた。
 開発時は、研究会も委託を受け試験栽培した経緯があるが、その時から「糖度は12%を超す甘さで、色や形も良い」との評価だった。楠本さんも「糖度が高く、適度に酸味があり、果形も良い。まりひめの名前も浸透してきた」と、この品種の良さを認めている。
 一方では、やっかいな問題に直面している。育苗や定植後に発生し、発病すると苗を枯らしてしまう炭疽病だ。毎年8千~1万本を育苗している楠本さんも、ウイルス検定済みの親株を使ったり、育苗場所を高くしたり、雨よけをして泥はねを防止するなどの対策に取り組むが、「万全な解決策はないのが現状だ」と言う。
 県農業試験場も「まりひめ」との掛け合わせで炭疽病に強い品種の開発に取り組み、平成27年度で3系統まで絞り込まれており、楠本さんも「まりひめ」をグレードアップした新しい品種の登場を待っているところだ。
 今年産の「まりひめ」は、昨年秋からの暖冬の影響で、1番花の出荷のピークが1カ月早い12月に前倒しとなった。「株が大きく育たないうちに実ができてしまった」と言い、量が欲しい1月から2月の収穫量が激減。「こんなに少ない年は初めてだ。思い通りにはいかないのが農業だし」と現実を飲み込んでいる。
 2番花の出荷ピークは3月になると見込まれ、梅の初期防除とかち合う可能性が高い。出荷日には父と母・京子さんと3人でハウスに入る日が続く中、経営の柱としてイチゴへの思いは自ずと高まっている。(文・写真=山本和久)

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