JA紀南広報誌

2016年10月号p03-01

2016年10月号もくじ

農を耕し、地域を起こす『農人』【No.38】  

イチゴ作り45年になる宮本正信さん。今年も9月の定植に向けて「まりひめ」の育苗が仕上げ段階だ

 「二足のわらじ」とはよく言うが、それらを器用にこなすだけでなく、双方とも懸命に取り組む。イチゴや果樹の農家であり、一方では「公益のために」との志を持ち、市議会議員の活動にもまい進する宮本正信さんを訪ねた。

田辺市稲成町(中央支所 稲成店管内)
宮本 正信 さん

45年続けるイチゴに一層気合い
JAの「地域支える」役割認識  

 南部高校園芸科を卒業後、昭和45年の春に就農した。早生ミカンの青切りの全盛期で、地元に完成したばかりの稲成パイロットにミカン苗を植えていた時期だった。
 就農後、自らの意思で無利子の後継者資金を借りて始めたのがイチゴのハウス栽培だった。「地元の市場に出荷する野菜の価格が不安定で、これを克服するのは施設園芸だと思った」と宮本さん。
 地元でイチゴに取り組む仲間が6、7人に増え、組合を作って技術を高め合った。現在のJA紀南稲成イチゴ研究会の前身だ。以来、約45年間、作り続けている。
 家族の強い希望で、平成25年に11㌃のハウスを建てて高設栽培を始めた。腰の高さほどの容器に入れた耕土で栽培するため、「腰をかがめなくてよいので体が楽。作業効率も上がった」という。
 一方、高設栽培は、灌水や液肥、電照、加温などほとんどの管理がコンピュータ仕掛けのため、加減が微妙。後継者の誠士さんや妻の京子さんと試行錯誤を繰り返し、技術はようやく確立の域に入った。
 品種は県が推奨する「まりひめ」。他のハウスと合わせ15㌃で栽培する。今年県から、1個35㌘以上、糖度9度以上を厳選した「まりひめプレミアム」の話がイチゴ研究会に持ちかけられ、宮本さん自身もさらに気合いが入っている。
 宮本さんにはもう一つの顔がある。田辺市議会議員だ。平成14年の初当選以来、市町村合併を挟んで4期目に入った。議員になる以前、「公(おおやけ)の役に立ちたい」との気持ちは、青年団活動や柔道で培われたと宮本さんは言う。
 「元々は引っ込み思案」という性格が変わった。青年団では田辺市青年団協議会の会長を務め、農業青年を含め若者の縦横のつながりを深めた。高校卒業後に始めた柔道は、警察官の土用稽古にも出掛けるなどして練習に打ち込み、3段まで昇進した。これらの経験が「大きな自信になった」。
 現在は市議会議員の有志でつくる「農業研究クラブ」の代表も務める。毎年の「梅の日」には東京都内の小売店で青梅を体験販売し大田市場も視察。今年の梅のひょう被害では素早く現地を視察した。TPPや農業・農協改革も農研クラブの取り組み課題としている。
 過去の青年団活動の経験から、「若者に交流の場を」と、地元稲成で開かれる盆踊りの若者による運営を仕掛けたり、農業青年の婚活活動として今年で10年目を迎える「田辺市アグリパートナー交流会」の委員としても活動する。
 農協改革の嵐吹き荒れる中、自らも青年部役員や生販委員長などを歴任し、身近な存在であるJAに対しては「議員としては農家目線で主張ができるようになりたい。政府の言うように、農協が無くなって良い訳がない。過疎対策や地域のインフラを維持している例も多く、すべて行政がやろうものならパンクする。JAが地域を支える役割は大きい」と主張する。
 市議会議員として、農業者として、JA組合員として、「自分だけが良くなってもダメだ」と、行動は常に公益性を重視し、若者が根付く地域と農業の活性化を願っている。(文・写真=山本和久)

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