JA紀南広報誌

2014年6月号p07-02

2014年6月号もくじ

きずな 常務(金融共済本部長)鈴木 孝司  

「TPPと日本の選択」を聞き  

 今年3月、「TPPと日本の選択」と題した講演会に参加する機会がありましたので、簡単にお知らせしたいと思います。
 講師は「家の光」でもおなじみの評論家でノンフィクション作家の関岡英之氏で、情熱あふれる講演でした。昨年10月号の私の本欄でもTPPについて書かせてもらったところですが、今回は視点が違いますのでご了承ください。
 まず、わが国の食料自給率についてですが、これまでは単純にカロリーベースでは40%前後で推移しているとの認識しかありませんでした。ところが穀物ベースとなればわずか26%で、品目別には、パンなどの原料である小麦が11%、豆腐や食用油の原料のダイズは6%、飼料用のトウモロコシは0%と、他の先進国とは比較にならないほど低い自給率であり、これら穀物の輸入先の大半は米国(アメリカ)なのです。
 つまり米国に対しては、すでに市場を開放していることになり、この開放の中心的役割を果たしたのは、アメリカ西海岸の大規模農業者であります。戦後米国の戦略で粉食(小麦)文化や、洋食文化が推し進められてきましたが、この立役者が彼らであったということです。
 確かに私たちが子どもの頃の学校給食は、それこそ、カチカチのパンと脱脂粉乳が中心で、肉、乳製品、鶏卵生産にトウモロコシ、油脂に、ダイズと、日本はアメリカの重要な輸出先に、仕立てられてしまっていたのです。

守るべきは安全性、多面的機能  

 先ほど米国の大規模農業者について触れましたが、わずか3%の大規模農業者で米国の農業生産額の約半分を占めており、さらに国内でも政治に大きな影響力を持っていると言われています。
 このことからもオバマ民主党政権が中間選挙を勝利するためには、輸出を拡大して支持率を上げることが必要で、その手段としてTPP交渉の合意を急ぎたいのです。
 また、米国の農業者の平均耕作面積については一世帯平均で198㌶、大規模農業者に至っては2553㌶と、日本の平均の1・9㌶の百倍から数千倍とのことです。「これでは政府が主導する規模拡大を促進したところで、戦える相手ではない」との関岡氏の話でありました。
 さて、TPP交渉ですが、4月のオバマ大統領来日による首脳会談と日米間協議でも、農産物関税や自動車分野の大筋合意には至らず、結論は先送りとなっています。JAグループとしては、引き続き、国会決議を踏まえ、日本農業を守り抜く交渉を政府に求めなければなりません。
 今さらですが、日本の農業は安全・安心な農産物の生産はもとより、環境や景観の保全や安らぎの提供など、多面的な機能を兼ね備えています。つまり、私たちは、本来守らなければならないのは食料の安全性や多面的機能であることを十分認識しなければならないのではないでしょうか。

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