JA紀南広報誌

2014年6月号p03-01

2014年6月号もくじ

農を耕し、地域を起こす農人【No.12】  

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白浜町安宅(日置支所管内)
北 和幸 さん(41)

 今やフルーツトマトとも言われるように、トマトにもう昔の野菜のイメージは無い。弁当の定番の一口サイズは、主婦にも子どもにも大人気。そんなトマトに魅せられた男が日置川沿いにいる。トマト一本で勝負する北和幸さんだ。

美味しければ口コミで広がる
ハウスでのトマト一本で勝負  

 21歳で就農した北和幸さんがトマト栽培に初めて触れたのは24歳の時だった。梅、晩柑、水稲、野菜の農家だったが、当時あったウスイエンドウの20㌃のハウスはすべてトマトに切り替わった。和幸さんはトマトに専念し、父・隆雄さんが果樹や水稲を受け持つ。
 トマト栽培のきっかけは田辺のいとこからの提案だった。当時JT(日本たばこ産業)のアグリ事業があり、JTがトマトの契約栽培農家を探していた。梅が全盛期だったものの、日々手入れして出荷する施設栽培に興味を抱いていた北さんはこの話に飛びついた。
 最初に取り組んだのが、JTの品種で、オレンジ色のミニトマトの「チェリーゴールド」だ。病気に弱く多収性ではないデメリットはあるが、それを寄せ付けない甘みと香り、美味しさがある。「食べた人からトマトじゃないみたいとか、トマト嫌いだった子もトマトが好きになったとの声を聞いた」と言い、今では北さんのトマトの一番人気で看板的存在だ。
 現在は味や形、大きさ、色と、それぞれ個性の違うトマトを消費者嗜好も考えて組み合わせ、チェリーゴールドを含め4品種に絞って栽培する。「アイコ」はフットボール型で、甘みが強く皮がしっかりし、パスタやピザなどの加熱用にも向く。県のブランド品種で知名度も高いミニトマトの「キャロルセブン」は「美味しい時期、この品種の右に出る物はない」。「フルティカ」は軟らかい食感でさわやかな香りの中玉だ。
 出荷先は地元市場、JA紀南の「紀菜柑」や「にこにこ市」などの直売所と宅配だ。「直売所は自分のトマトをPRできる営業場所だと言えるし、宅配でもお客様の声を聞け、美味しければ口コミで広がる。顔の見える売り方としては人柄も大事にしたい」と話す。
 最近のミニや中玉トマトは包丁を使わずに一口で食べられ、彩りから弁当作りでも重宝され、北さんもトマト好きが増えたと感じている。一方、トマト栽培が糖度競争となっている現状に、北さんは少し違う考えを持っており、「糖度が高くて美味しいのは当たり前。僕は『この値段でこんなに美味しい!』と言われる売り方をしたい。手頃な値段でお客様に何度も購入してほしい」と話している。
 このため高糖度を狙い極端に水を切る栽培とは一線を画し、栽培でも安定収量と味のバランスを重視。ハウス内のトマトの木も緑色が目立つ。そこには「水も入れ伸び伸びと育て品種の特性を引き出したい」との考えがある。
 トマトを始めて17年、「農業っておもしろいと思わせてくれたのがトマト。作る喜びを感じさせてくれ、これが農業だと思えた」と振り返る。地元での栽培事例が少なく、何ヵ月もかけて育てた木が病気でダメになったり、味がうまく出せないなど、失敗が連続しギブアップしかけた時もあった。
 しかし「父の理解と、周りの人に背中を押してもらい、時流に乗ることができた」と、自身の農業に及第点を与えられるまで来た。妻の志保さんと結婚し3人の子どもに恵まれたのもやる気の源になっている。(文・写真=山本和久)

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