JA紀南広報誌

2014年5月号p03-01

2014年5月号もくじ

農を耕し、地域を起こす農人【No.11】  

白浜町市鹿野(市鹿野店管内)
上村 誠 さん

 白浜町市鹿野(川添地域)で古くから栽培されている川添茶。品質の良い茶の生産を目指すだけでなく、お茶会や試飲会など、消費拡大に向けたPR活動を精力的に行う生産者団体「川添緑茶研究会」の会長を訪ねた。

“川添茶”に自信と誇り持って
小さな産地だからこそ良い物を  

 上村さんの就農は高校卒業後。父親が茶の生産拡大を展開していたため、卒業後に栽培技術を学ぼうと静岡県に出向いた。それ以降も、植栽を続けながら技術・知識を深め、情報を吸収するために年に数回、茶栽培の先進地である静岡へ足を運んだ。
 他の茶産地にも同じく農家研修を受けた農家がたくさんあり、当時から現在に至るまで、いろんな産地の農家と交流を深めている。
 「情報があるところに行かないと自分たちのものにはならない」と、知り合いのいない産地にも足を運ぶ。「視察も1回目は人と知り合うことが目的。こちらに来てもらって話を聞くだけではわからない環境や意識などがあり、現場に出向いて初めてわかることもある」と話し、繋がりを作りながら技術や知識を深めている。
 上村さんがこれまで茶の栽培を続けてきて、苦労を感じているのは、県内で茶の生産が進まないことだ。「良い茶ができる条件は整っているのに」と上村さんは話す。
 川添地域で本格的に茶栽培が始まったのは昭和30年からだ。それ以前も茶栽培が行われており、歴史は古い。しかし、そんな川添地域も小さな産地であるため、技術、知識が少ない。
 「技術や知識が少ないなら、他から入れないといけない。緑茶研究会には今までの交流からたくさんの技術、知識、情報が入ってくる。人との繋がりができることも茶という作物の特性だ」と話す。
 川添緑茶研究会は栽培だけでなく加工技術の向上にも取り組んでおり、平成元年からは、静岡県から講師を呼んで、茶の手もみ技術の勉強を行っている。「技術は、これで良しという上限はなく、変わることもある。現状に満足せず、いつまでも上を目指さないといけない」と上村さんは話す。
 JAの市鹿野製茶工場では、機械で手もみ茶の手法を再現しているが、手もみ製法の技術を向上することで、より高品質の商品を作り出すことができる。
 こうして高品質の茶を生産しても、地元での消費が進まないことに上村さんは頭を悩ませている。
 緑茶研究会では地元で茶をアピールしようと、お茶会や試飲会を開いている。そこで茶の飲み方やおいしさ、楽しさを広めながら、消費者に「お茶ってこんなにいいものやで」とアピールを繰り返す。
 上村さんは、試飲会での反応から「若い人が茶に関心がないわけではない」と感じている。そして、もっと積極的に表に出てPR活動をしなくてはいけないとも…。
 上村さんは「自分の作ったものに自信と誇りを持っていきたい」との言葉を繰り返し発する。その言葉の裏には、「山間部の小さな産地だから」という諦めはなく、「だからこそ良いものを」という強い意志が感じられる。
 「製茶技術の師匠からいただいた“醺肥辛甘非真味、真味只是淡”という言葉は、本当のおいしさは飽きのこない味という意味だ」と上村さんは話す。上村さんは茶しか持たない旨味を大事に、これからもおいしい茶作り、そして茶の産地振興を目指す。
    (文・写真=栗栖昌央)

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