JA紀南広報誌

2014年11月号p07-01

2014年11月号もくじ

きずな 専 務 山本 治夫  

規制改革会議答申への疑問  

 いま政府では、規制改革会議の答申による農業・農政改革を盛んに取り上げています。それに呼応するかのように、大手マスメディア等も政府の応援団のごとく、そのことを取り上げています。
 改革は、恐らく誰も異論を挟まない、「農家所得の向上」のためということですが、本当にそうでしょうか。
 改革の一つ目は、「全国(県)中央会制度は農協系統組織内の検討も踏まえ、自律的な新たな制度に移行」とし、単位JAが中央会の制約を受けず―現実には何等の制約も受けていない―に自由に運営できるよう法律上の中央会制度の廃止(?)も視野に入れたかのような内容です。
 その説明の中で、中央会は下部組織から数十億円の賦課金を徴収していると、何か中央会制度を否定せんがための言い方にとれますが、事実には違いないけれど、それは理由のあることです。
 少しでもJA運営に関わった者なら分かることですが、身近な例で、毎年6月に組合員にお届けする総代会資料ひとつ作成するにも、単位JAが金に糸目をつけず、多くの専門職員を抱えれば別ですが、単位JA独力で、法に則ったその冊子を作成することは不可能です。最新の経理・法務・世界情勢を把握できて初めて作成可能となります。

農協改革は単位JAも的に  

 改革の二つ目は、「全(県)農は農協出資の株式会社に転換できるよう法整備し、独禁法の適用など問題が無ければ株式会社へ前向きな検討を促す」とのことです。
 問題点はいくつもありますが、一番の問題点は、会社化すると当然のことながら独禁法の適用除外になります。つまるところ全農の株式会社化は協同組合の原点である共同購入・共同販売を否定することです。
 株式会社の唯一の目的は利益追求です。利益の出ないことはしない。利益の出ない地域では事業はしない。これが株式会社です。
 その環境下で全(県)農は株式会社として、地方の単位JAとどのように向き合うのでしょうか。また、単位JAはあらゆる取引きのリスクをどのように担保することができるのでしょうか。
 このことで一部の大農家は、場合によっては瞬間的に利益を得ることはあるかもしれませんが、日本の農業の規模では永続は考えられません。
 これらは全国レベルの話だから、我々組合員や単位JAには関係ないと思いがちですが、以上のようなことから、全くそんなことはありません。
 一方、個別単位JAを的にして、改革の三つ目は、「信用事業の譲渡・代理業務店方式を認めているJAバンク法の活用を推進する」です。
 そうなれば、当然のことながら単位JA独自の信用事業運営はできなくなります。貸出しなどは全国統一の、それも農林中金の取次ぎになるのではと考えられます。
 また余裕金の運用も当然できなくなることから、これまでのように信用事業がJA経営に貢献する姿は描けず、たちまち営農指導や選果場運営等、農業振興のための投資活動が困難になります。

地域基盤を支えるのはJA  

 改革の四つ目は、「准組合員の事業利用は、正組合員の事業利用との関係で一定のルール導入を検討する」とのことです。
 今も、員外利用制限は法定されていますが、農協は農業者の組合だから非農家(准組合員)の利用を員外利用に加えて制限するとのことです。定かではありませんが、准組合員の事業利用は正組合員の2分の1を超えないようにするのではと、巷間言われています。
 万が一にもそのようになったとき、地域協同組合としてのインフラ(地域基盤)機能は果たせなくなるとともに、JA紀南の経営は立ち行かなくなることは明らかです。
 これら四つのどの項目をとっても政府が掲げる農業者の所得の増大にどのようにつながるのか不明です。また、改革には他にも幾つか項目がありますが、それぞれ問題点はあります。
 「農を基軸とした地域協同組合」を標榜するJA紀南は、農業者の協同組合であるとともに、前述のような極めて公共性の高い、インフラ機能を果たしています。「地方の崩壊」が話題となる昨今ですが、微力ながらも支えているのはJA紀南と自負しているところです。
 農家・地域の組合として必要な自己改革は当然のこととして、この答申の真の狙いはどこにあるのか。疑心暗鬼が募るばかりです。

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