JA紀南広報誌

2011年3月号p02-01

農をいきる 地力請負人  

有利販売対策の一つとして柏木さんが取り組んだ「ワタ巻き袋がけ」

田辺市上秋津
柏木 裕一さん(JA紀南晩柑分科会 会長)
 年明けから出荷される晩柑類は、JA紀南が複合経営として導入を進めている作目だ。安定した数量や価格で計算しやすい一方、他産地との差別化をしなければ有利販売できない課題もある。今後の紀南産地がめざす方向性に触れてみた。

こだわりの晩柑で有利販売を
今年から「ワタ巻き袋掛け」導入  

田辺市の上秋津地区は、紀南屈指の老舗かんきつ産地で、梅の栽培が進んだ中でもミカンにこだわり続ける農家が多い。特に晩柑類の品種はざっと80種以上あるといわれる。
 現在、JA紀南では「ハッサク」、「ネーブル」、「ポンカン」、「清見」などをできるだけ樹上で熟させて出荷する「木熟シリーズ」をはじめ、人気の「不知火(デコポン)」や「せとか」なども推奨品種として面積の拡大を図っている。
 晩柑分科会の会長を務める柏木裕一さんは、早生伊予柑を主体に不知火や「春峰」、「はるみ」など合わせて30㌃を栽培する。25年前に兼業で農業を始め、10年前から本格的に従事した。
 「ミカンを含め、かんきつ類の栽培は奥が深く、10年目にして、ようやく剪定が分かってきたかなという感じ。良いものを作る人はそれだけ手を入れており、理にかなった栽培をしている」と話す。
 晩柑類は、数量、販売単価とも比較的安定しているものの、価格は全般に徐々に下落傾向にある。柏木さんが古くから栽培している早生伊予柑も最盛期で1㌔当たり400円の値が付いたが、最近では半値近くになっているという。
 現在、妻と息子の3人でやりくりする柏木さん。「高値で売れない時代なので、経費や労力を削減する努力は大切だが、それも限界がきている。後継者がある程度収入を確保できる販売方法を考えていかなければ」と気を引き締める。

有利販売に向け、JAでは他産地と差別化する取り組みも進めている。その一つが今年産から導入した「不知火のワタ巻き袋掛け」だ。
 これは果実に袋掛けする際、袋の中に水が浸入しないよう軸に木綿100%のワタを巻く方法で、不知火に発生しやすい水腐れ対策に高い効果が期待できる。
 柏木さんは、「不知火は酸が引けると早くて1月中旬から出荷が始まるが、ワタ巻き袋掛けにより、木成りの期間を長くして3月中旬から出荷できる」と紀南ならではの個性化商品として期待している。
 通常の袋掛けよりも時間と手間はかかる。しかし大規模産地との競合を避けるためには、同じ栽培や出荷の方法では太刀打ちできないのが実情である。
 不知火で成功すれば、「清見」などにも取り入れたいという柏木さん。「とにかくうまいものを作って消費者に食べてもらいたい。品種の選択もカギになるが、自分が好きになった品種に力を入れることも大事だ」と話している。
 近年は雨が長期間降らなかったり、極端な高温や低温があったりと異常気象が続いており、安定生産は至難の業となっている。このため、高値で販売する方法を模索し続けなければならない状況だ。
 柏木さんは「紀南は梅やミカンに比べて、晩柑はアピール力が弱い」と指摘する。マスコミなどを使った宣伝や、大手市場だけに固執しない売り方など、取り組むべき余地はまだあると考えている。
 地の利を生かし、多種多様な品種の導入やこだわり栽培が可能な紀南の晩柑類。有利販売のためには、生産と歩調を合わせた多様な〝仕掛け〟が必須だ。
(文・写真=編集部・竹内一寿)

紀南勝景 ~その23~  

興禅寺 上富田町市ノ瀬
 創建は平安時代前期の898年といわれ、聖観世音菩薩立像(町指定文化財)をはじめ、興禅寺文書と呼ばれる多数の古文書類を有している。境内隣接地には1973年に建立された白い巨大なだるま座像があり、「だるま寺」と呼ばれ親しまれている。

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