JA紀南広報誌

2010年5月号p02-01

農をいきる 地力請負人  

厳しい状況が続いてきたが「風向きは必ず変わる」と信じる松本崇さん

 紀南の地域経済を支えてきた梅産業だが、景気低迷の影響等により、流通や販売面など以前とは取り巻く環境が激変している。そんな中、産地の維持と復興を切に願い、率先して対策に着手している、高い志を持った生産者を追った。

田辺市下三栖
まつもと   たかし
松本 崇さん

ブランドの価値、価格の維持を
紀州梅産地の再興願い尽力  

青梅の手取り、漬け梅用のネット収穫は5月中旬から6月いっぱいまで続き、紀南地方は梅作業一色となる。さ特に今年は3月末に低温障害が発生し、生産量に大きな影響が出るとみられる中での22年産のスタートを迎える。
 このような産地の状況を鋭く分析し、将来を見据えているのは、田辺市下三栖の松本崇さん。「一家10㌶農業の経営モデルを確立することを目指した」と話すように、2人の息子らと共に、20㌶の面積で4千本の梅の木を栽培する。
 その傍ら梅部会長を務め、紀州梅のブランド価値の維持、価格の確保のために力を尽くす。「3万㌧の梅を預かっている気持ち。キロ単価が10円上がれば、単純に3億円上がることになる。たかが10円、されど10円で、大切なのは再生産できる〝建値〟だ」という。
 さらに「米やミカンなど他の農産物に比べて梅の研究は始まったばかり」という松本さん。「NK‐14」や「橙高」といった新品種も出ているが、これらの生育特性も見極めながら、導入していく必要があると強調する。
 JAに対しては農家のための組織として、支援策や関係組織のさらなる連携を要求する。「我々持ち回りの委員に意見されるようではダメ。もっと勉強し、謙虚に耳を傾け実行する姿勢を持ってほしい」と苦言を呈すが、産地を思う正直な気持ちの裏返しでもある。

3年続きの無難なし――。梅も天候に左右されるリスク産業といえるが、3月28日の降霜は紀南産地に大きな被害をもたらした。松本さんは「90年に一度の未曾有の大被害。平地から標高の高いところまで広範囲に渡って被害が発生している」と予想以上の被害の大きさに愕然とした。
 ただ、松本さんが収集した情報によると、他産地においても低温障害が発生し、中国産も不作傾向だという。「厳しい状況が続いたが、ようやく風向きはこちらに変わるだろう」と期待する。
 現在の〝産地疲弊〟を乗り越えたとき、大切なのは若い後継者の確保。「果樹産業はある程度経験が必要だ。せめて後継者は30代から就農してほしい」と願っている。
 梅部会長は8月で任期が切れる。「かつての販売高〝40億円〟に戻したかったが、叶わぬ夢に終わった。たびたび会議で激論を交わすなど、他の役員さんには迷惑をかけた」というが、それも産地の発展を心から願っているからだ。
 これからは現場での時間を増やして、ゆっくり木と向き合って話をしていきたいという松本さん。しかしその目線の先は〝紀州梅ブランド復活〟の道筋に向いていることだろう。
(文・写真=編集部・竹内一寿)

紀南勝景 ~その13~  

雫の滝(しずくのたき)すさみ町小河内
 国道から車で20分ほど山手に入ったところにあり、周参見川本流にかかる高さ30㍍の2段の滝。初夏の新緑、秋には紅葉と四季折々に美しい姿が見られる。特に夏場は涼を求める人の姿が多く見られ、アユやアマゴなどの川魚を釣る光景が見られる。

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