JA紀南広報誌

2010年10月号p12-01

力結集し閉塞感の打開へ  

中芳養支部の山下慶之さんが発表
県青年大会「青年の主張」
テーマ 農業の発展と可能性  

農業に対する考えを述べる山下さん

 皆さん、農業について、または昨今の梅事情についてどう思いますか? 私は正直不安です。
 それは、梅の売買が活発に行われていないことや、価格低迷という目の前で起こっていることに対する不安ではなく、本当に日本農業が必要とされているのかという疑問です。
 そして、「この状況をどのようにすれば打開することができるのか」という閉塞感に非常に強い不安を抱えています。
 そこで私なりに、日本農業について考えてみたいと思います。
 現在は皆さんご存知の通り、日本の食料自給率はカロリーベースで約40%と先進国の中でも低い数字となっています。これにはさまざまな原因があると思います。
 日本は貿易立国であり、技術力をメインに国を支えています。このことから日本の製品を輸出して、代わりに食料等の輸入も行わなければ貿易国として成り立たなくなります。
 しかし、私がここで言いたいのは恨み言ではなく当然のことで、国としての発展を考えたとき、資源の少ない日本は自らのストロングポイントである技術力を最大限に活かして機械製品を輸出し、国土が広く大規模経営で作られた安い農産物を大量に輸入しなければならない…。
 それは残念ですが当然のことだとしか言いようがありません。これらを踏まえると「本当に日本という国に農業が必要なのか?」と思ってしまうのです。
 私は、現在の日本にとって「必要なもの」と「求められるもの」は、ごく少数のような気がします。
 「必要なもの」「求められるもの」は景気によって左右されますが、現在の日本では一般的な消費者は安価なものを求めていると思います。しかし、私は本当に必要ならば多少高価なものでも欲しがると思うのです。
 一つ例を挙げるならば、携帯電話はまさに必要とされ、この20年くらいの間の普及率は目覚ましいものがあります。一時期の梅ブームもこれに似たような現象で、一気に広がりをみせ全国各地で生産量を拡大しました。
 その後、梅の消費は減少する一方です。そして問題は、この後どうすればよいのかという頭打ち状態を打開する策です。
 今、梅ワイン、梅酒、梅ジュースなどの飲料、はちみつ梅、かつお梅といった味付けの改良、練り梅や梅エキスなどの加工品と様々な商品が開発・改良されています。
 また、先日の梅部会の視察では、梅シロップを牛乳で割るといった新たな方法を提案して消費宣伝活動を進めているようです。
 一見これだけの商品があって全国的に広がりがあれば梅の消費も安心のように思いますが、周知の通り、梅のタルが倉庫に売れ残っているという状態です。地元企業や農協などでこれだけの商品開発や販売が進められていてもこの状態です。
 ここで、私の脳裏をよぎるのは一農家として何ができるのかという閉塞感です。
 正直、今ここで「みんなで手をつないでこれをやろう」というアイデアを私は持ち合わせてもいませんし、我々は同業者ですが、個人事業者でもあるので、現実的に手を取り合うのも難しいと思います。
 しかし、いろいろな著書を読む中で、これからは農業法人として大規模経営を手がけていかなければ日本農業は成立していかないという人もいます。
 だから、こういう時に必要になってくるのは、小さいことでも少しずつ団体でやっていくこと。そこからいろいろなアイデアを出し、普段関わることのない人ともコミュニケーションを取り、新しいものを生み出す。これが大切だと思います。
 農協の青年部はまさにこれに当たる団体だと思います。
 同年代の同業種ではあるが、普段は個々に仕事をし、何か必要なときは会議を行って現状を話し合い、意見交換が活発に行われています。
 私の支部でも、梅剪定の委託作業を行っており、支部の部員で共同作業を行うことにより、それぞれの知識を学び合ったりすることができ、とてもいい機会を与えてくれます。
 ただ、青年部活動に提案を挙げるとすれば、消費者の方に向けたPR活動を積極的に行うことも大事だと思います。
 PR方法といってもいろいろありますが、まずは独自の商品を作るなどして、その農産物の新たな可能性を追求することで、多くの消費者の方に知っていただくことができます。
 そして、青年部員が商品開発に参加することにより、加工技術を習得する良い機会にもなります。
 次に、別の方向からのアプローチとして「消費者の意識改革」です。
 消費者が安価なものを求めるのは、個々に生活観が違うにしても一般的なことだと思います。
 ならば意識改革として、国産で安全なものを消費者に受け入れてもらえるようにし向けていくには、どのようにすればいいのか私は考えたいと思います。
 例えば、曲がったキュウリ、少し葉をかじられたキャベツなどの規格外品でも、中身はとても安全で、形や見た目が少し悪いだけで味も変わりはありません。
 このように見た目だけで、国産のものが消費者の購入判断基準を下回るという価値観をまず変えていかなくてはならないと思います。
 それにより、我々も度重なる消毒の回数を減らしてコストを削減することができ、価格を少しでも下げることができます。
 これは日本農業の現実として、単位面積当たりのコストがアメリカなどに比べ非常に高いということから、農家一軒当たりのコストを削減し、価格を抑えることにより上限価格を上げるのではなく、同じ値段でもより農業利益が得ることができるということです。
 このように、青年部活動等の団体で活動することにより、より多くの消費者の意識改革を行い、個人活動で進めるにはとても難しいことを、地域で進めていくことが必要になってきていると思います。
 現在、私の住む地域のJA(紀南)では、大型直売所を設け、地域で収穫された農産物の販売を行っています。直売所やインターネットでの販売は、生産者と消費者の信頼関係を生かした販売方法だと思います。
 生産者は、海外からの輸入品ではなくより新鮮で安全な地場産のものを届け、消費者との信頼関係を結んでいきます。この信頼関係を強固なものにするためにも、先ほどからの意識改革という言葉が必要になると私は考えます。
 ここまで、規模の大きな話や地域の小さな話をしてきましたが、現実としてまず皆さんは日々やらなければならない仕事が山積みだと思います。人によっては経営に関して、自分のペースでやっていけたらいいと考える人や、経営するならやはり営利を大前提に考える人、第一に品質にこだわるという人などさまざまだと思います。
 私の家はまだまだ父親頼りの経営であり、一年中最低限こなしていかないといけないことが多々あります。その中で、自らの作った梅やミカンを求めて下さる方々に、買っていただける価格、品質の維持、またはさらなる発展をしていきたいと思います。
 常にお客様目線で考えることが重要であり、これからは買ってもらう農業から「買わせて」と言っていただける農業への変化が求められると思います。
 これを達成するには、まだまだ長い道のりと個人の努力だけではなんともならないことが多々ありますが、これらを達成することにより自ら抱える閉塞感を打破できると考えています。

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