JA紀南広報誌

2010年10月号p02-01

農をいきる 地力請負人  

田辺市中芳養
片井 邦芳さん

 農業の将来を担うJA青年部。全国的に後継者不足が進む中、紀南では毎年コンスタントに若者が農業の道を選んでいる。現状は厳しいが、活路を見出し、安心して農業ができるよう〝若い力〟を最大限に引き出したいと願う青年部長に話を聞いた。

アイデアと行動力をもって
若い力が難局打開のカギ  

部員数233人は県内トップ、全国でも随一の規模を誇る20~30代中心の農業後継者組織が、JA紀南の青年部である。田辺市中芳養の片井邦芳さんは平成22年度の部長を務めており、若い力をまとめている。
 現在、梅5㌶を両親と3人でやりくりする片井さんが就農したのは14年前。ちょうど梅の価格が好調だった時代だ。近年はデフレ不況や安い中国産の台頭などで紀州梅の消費が低迷し、農家が一次加工するタル製品価格も過去に例がない厳しさとなっている。
 「農業を継いだときは、まさかこのようなことになるとは思ってもいなかった。でも今から思うと、どこかに落とし穴があったのかもしれない」と振り返る。
 費用節減は限界に近い。経済情勢は一個人でどう変わるものでもない。ただ文句ばかり言っても仕方がない。何かをしなければ――。そんな想いからSQF(セーフ・クオリティ・フード)という国際基準の認証取得に向けて挑戦している。
 ただ、逆風ばかりではない。今年は猛暑の影響で、熱中症対策として梅干しの消費が伸びている。田辺市とJA紀南による「梅干しを食べようプロジェクト」でも、モニターからさまざまな効果を検証するなど健康食としても見直しを図る取り組みが行われている。
 片井さんは、「何がきっかけで局面が変わるか分からない。とにかく今は、一から這い上がるつもりで、風向きが変わるまで頑張るしかない」と力を込める。

青年部活動で特に力を入れているのが、特産物の消費宣伝だ。「若いときは畑ばかり見ていても飛躍できない。消費地の現場を直に見て、消費者の思考や動向などに触れて自分の考えを持つことが大事」というのが片井さんの考え方だ。
 従来から行っている愛知県小清水小学校とのミカン交流、園田女子大学での消費宣伝などに加え、今年は田辺扇ヶ浜で観光客に梅ジュースなどをPRしたり、食農教育の一環として新小学1年生に梅干しを配布したりと、ますます活動の幅を広げている。
 「生産者として、消費者に伝えたいことは山ほどある。その距離を縮めることで農産物の良さを深くアピールでき、農薬の使用についても説明できる。生産者と消費者の架け橋的な役割を青年部が担うことができれば」と話す。
 さらに後継者が農業をしていくうえで大切な独身青年の〝婚活〟にも重要な取り組みとして対策を進めたいとしている。これから農業の中心となる者にとって、やはりパートナーの存在は大きいと片井さん自身も実感しているからだ。
 将来も安心して若者が農業をできる環境づくりに、青年部としても何かできることはあるはず…。個々ではどうにもならないことも、若い知恵と力が結集した組織には、ヒントや可能性がたくさん詰まっていると片井さんは感じている。
 「正直、若い力をまとめるのは大変です」と苦笑する片井さん。しかし、若者ならではの発想や行動力は、必ず難局を打開できる力になる――。そう信じ、日々の青年部活動にまい進している。
(文・写真=編集部・竹内一寿)

紀南勝景 ~その18~  

滝尻王子 田辺市中辺路町
 熊野九十九王子の中でも、特に格式が高いとして崇敬される「五体王子」の一つに数えられた。この王子は岩田川(富田川)と石船川が合流する地点にあり、2つの急流がぶつかりあって滝のように音高く流れたことに由来すると伝えられている。

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