JA紀南広報誌

2008年6月号p26-01

2008年6月号もくじ

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農業の中で感動を……  

 今から21年前、農家の長男である夫の実家に帰り、両親と同居しました。その後、父は体調を崩したので、「家にいて農作業を手伝うのが我が家のために良いかな」と思い、両親が作っていたレタスや小菊の手伝いを始めました。
 会社勤めの夫も休みの日は農作業に加わり、当時小学5年と3年だった長男、次男も畑に誘うなど、お互い話をしながらの農作業もあり、家族の力によって仕事がはかどった気がしました。
 けれども一年経たないうちに父が入院することになり、初めて植えたコーンや小菊の芽揃会には、私一人で行かなければならない事態でした。結局、3反半の稲作の担当は夫が、花・野菜は私ができる範囲で作ることになりました。
 母に負担をかけないよう、また、夫の休みを待ってもいられず、他の農家の手順や工夫を見て習いました。定植時や収穫時の労力を考えて花の作付けを決めたり、道具の使い方が分からないものは、押したり引いたり。トラクターなどの機械を使うことや動噴の消毒にも挑戦しました。
 初めは農作業と家事とで精いっぱい。その上ハウス設備や農機具の支払いは大きな負担でしたが、「大変かどうか頑張ってみんと」と、とにかくやってみようと決めました。
 約2反の面積で100坪のビニール張りは、家族や周りの方に手伝ってもらい、あとのことは2、3年過ぎた頃に花・野菜作りの工程をこなしていけるようになりました。
 そうこうしている中、父が他界、2人の子どもは大阪で就職。なかなか仕事も進まず、時には野鳥が近くまで寄ってきて私に目を配りながら、私の動かした土からエサを拾っていくことも……。
 そんな毎日の中、未熟な私が播いた種でも時期が来れば、芽が土を持ち上げるものなんです。土の中で沢山の根が支えているのも見えます。
 ミミズだって、カエルだって、ヘビだって時には素早い動きで「みんな力強く生きているんや」という感じでした。
 自然とのふれあいと物作りの中で、生き物を相手に歌を口ずさみ、童話も思い出しました。子どもの頃に感じた時より物事の重みも増すようで、昔から親しまれている童話や童謡に改めて感動し、また感動を求めて身近な読み物にも目を通すようになりました。
 収穫時は花をじっと眺めたり、近くのカラスに話しかけたりしていて、さあ大変。あっという間に日暮れが近づいていたこともしばしばでした。
 時には他の人の作った花を買い求め、思いのままに切って生き生きとしている花を見つめていると、癒されるだけでなく、作った人の花への想いも伝わる感じです。ベテランの方の仕事を眺めたり、会話もそう。「私もいい品を作りたい」と自分を畑へとせき立てられるのです。
 それから、普及所の方やJA職員さんに指導をいただいたこと、家庭の事情で花の収穫が遅れそうな時に助け合ったことは、今まで続けられた大きな力だったと思います。
 母は今89歳です。野菜の手入れや夏小菊の出荷の選別等、できることは気長に助けてくれます。秋菊の大輪の花を咲かせるのも楽しみで、栽培書を2人で目を通すのですが、昨年は害虫被害や菊の丈の短い物もありました。でも、母とは共通の話題と目的を見つけていきたいです。
 野菜は少しの量で多くの種類の作付けを心がけ、我が家で必要な分だけ使います。直売所ができてからは少量でも出せますので、できのいい物は花と一緒に出します。野菜の売上げは、食卓の賑いや食事のバランスのためにつながりうれしい変化です。
 楽しみに育てた新鮮な野菜に「旬の初物はおいしいなあ」と母と次の播く種へと話が続きます。それを聞いている夫が一言「いや、ご飯がおいしい」と、3人の夕食はよくこのような会話になります。
 いろんな悩みに落ち込みがひどい私でも、体を動かし、おいしく食事をいただき、ぐっすり眠ると少しは冷静に受け止められるように思えます。
 農作業の方では、土作りのための堆肥を施こすこと、野菜への減農薬、花への農薬散布も慎重に。近頃は、イノシシ、シカ、アライグマ等の対策も気にかかります。
 春と秋の花と、稲の忙しさが重なる時には、2年前にUターンしてきた長男夫婦の手助けがありますし、夫も間もなく定年退職を迎えます。
 20年を思い返すと、自然災害もありましたが、始めた頃から10年ほどは、手に余るほど作付けをしたこと、ハウスと路地栽培に分けて収穫時期の幅を持たせたことなどいろいろありましたが、無事過ぎ去ったかなあと思えます。
 私の喜びは、自分の体が一番動けた時期に、やらなければならないことを一生懸命やったことと、気持ちが落ちこんだ時は楽しみに変えて自分なりに頑張った、頑張りが続けられたことです。
 夫の退職後は、子どもや孫たちが野菜を楽しみに待ってもらえるよう、頑張りたいと思っています。
 直売所を通じ「地域のみんなが潤えるように」と頑張ってくださっている先輩や、出荷物を確認して品揃いに努力してくださっている会員さんへの感謝の気持ちを、会員の一人として見習わなくては。女性会員、地域住民の一人として自覚を持つように努力しなければと思うこの頃です。

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