JA紀南広報誌

2004年9月号p21-01

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【第17回】

 第6次産業化が農業の
  悲観論を打ち消す  




  秋の夜長に、インターネットサーフィン(あっちこっちのホームページの閲覧)をしていると、第6次産業という文字がよく目に飛び込んできます。いま農産物生産と販売の現場で起こっている変化が、第6次産業という言葉を通じて見えてきました。

飲食費支出の第1次産業への還元は23%
 
 現在、日本国民の1年間の飲食費の支出額は約72兆5,000億円で、そのうち第1次産業である農業への帰属は、わずか16兆6,000億円だと言われます。あまりに数字が大きいのでピンときませんが?「え~ちょっと待てよ!」、あれだけ辛抱して農産物を生産しておきながら、第1次産業に返ってくるのが全体のわずか23%とは……。あとの55兆9,000億円はいずこへ?
 そうです、残りは食品工業(第2次産業)や、流通・外食産業・飲食サービス業(第3次産業)に流れ、その割合は年々増しているのです。私たちの農業は作るだけ、原料を第2次、第3次産業に供給するだけというのがこの金額を見ても明白です。原料に付加価値を付けること、流通・販売するための雇用までもが、主に都市やその周辺に立地している第2次、第3次産業へと流れてしまった結果だと思います。
 都市に吸い取られている付加価値や雇用を急いで取り戻す必要があります。このまま第1次産業に座して留まるのではなく、農家やJA、そして行政などが一体となり、積極的に第1次産業に第2次、第3次産業を加えた第6次産業に農業を転換させない限り、地方が豊かになることはないと思います。

梅の生産・加工は第6次産業の成功事例
 
 JA紀南の特産品である梅の生産、加工、販売で見てみると、まさしく先進的に第6次産業に取り組み成功しつつある事例だと思います。つまり、第1次産業(農家による生産)+第2次産業(農家による白干し加工、JAによる調味加工)+第3次産業(JAによる加工製品の販売)=第6次産業を成しているのです。
 こういったことが、和歌山の日高から田辺・西牟婁地域で行われています。加工技術、製品化、販売に関しては、まだ少し弱いようにも思われますが、それでもこの地方や農家に大きなお金が落ち雇用も増えています。
 JA紀南のもう一つの柱であるかんきつ類の生産・販売も、思い切って原料供給型の第1次産業から脱し、第6次産業に方向転換する必要があるのではと思います。このまま第1次産業のままでかんきつ類の振興対策を繰り返していても、未来は見えて来ないと思います。
 ただ、第6次産業に方向転換するには、乗り越えなければならない壁があります。JAの組織体制においては、企業的な経営が可能になる組織への転換であり、生産・加工技術等の高度化も非常に大切です。さらに経営管理や企画、情報発信に優れた人材確保も重要です。
 また、世界遺産登録に代表されるような、JA紀南管内の地域や人材資源を見出し、それを農業にどう活用するかなども大事なポイントになると思います。

直売所や産地直送も第6次産業の流れ

 農産物の安全・安心が叫ばれる時代、地産地消、産地直送といった消費者ニーズの要求があり、田辺・西牟婁管内には現在、有人の農産物直売所が19店舗あります。
 農家や地域住民が地域の将来のあるべき姿を考え、共に力を合わせて直売所を出すのは、たいへんな苦労があります。仲間集め、資金集め、施設建設、出店準備、そして品揃え、包装、加工、価格設定、販売管理、会計処理、対面販売といったプロセスが加わってきます。
 いままでの農業には、このようなプロセスは不要でしたが、全国的な流れを見ても、これからは、そんなこともいっていられない時代がやってきます。
 第1次産業で得た農産物に付加価値を付け、少しでも多くのお金を還元させ、農家や地域そのものを豊かにするとの目的が、農産物直売所や産地直送には入っています。このようなことも第6次産業化の流れのひとつです。
 JA紀南の梅の生産・販売の現場で起きていることも、地域で次々と直売所が立ち上がってきていることも、世の中の流れに対応していこうという紀南の農業者の先進性と強さだと思います。JAの経営指導においても、いままでのような栽培技術重視の第1次産業的な指導から、第2次産業的、第3次産業的な技術指導ができるスタッフの確保と組織化が急務だと思います。もちろん、農家の意識改革も急ぐ必要があると思います。
 ますます、多様化する消費者ニーズには、梅ひとつだけでは対応しきれません。JA合併で、“大きな多様性”という財産を手に入れたJA紀南ですので、これに第6次産業的な手腕を取り入れれば、いまの農業の悲観論的な考えは打ち消しができると思います。

〈木村則夫さんEメールアドレス〉
      info@kimura-e.com
  〈緑の果樹園の中の小さなホームページ〉
      http://www.kimura-e.com

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