JA紀南広報誌

2004年5月号p16-01

意欲高い産地ほど品質も良い  

九州共立大学経済学部助教授 細野堅治氏が生鮮果実の市場動向と産地の在り方説く  

ふれあいセンターで「きなん21セミナー」

 JA紀南は2月26日、本所営農生活本部ふれあいセンターに100人を集めて平成15年度の第4回「きなん21セミナー」を開催、九州共立大学経済学部助教授の細野堅治氏が「果実マーケティングの方向と産地の対応、生産者の役割」をテーマに講演した。細野氏は、低迷する生鮮果実、特にミカンの販売、流通、消費の近況を説明し「JAだけでなく、生産者も市場や量販店、消費者のニーズを把握し、産地全体が高いモチベーション(生産意欲)で取り組むことが重要だ」と訴えた。

《演 題》果実マーケティングの方向と産地の対応、生産者の役割  

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大量消費から高級・少量へ
 近年、生鮮果実の消費、流通環境の変化が激しい。高度経済成長期にあった安価な果実の大量消費から、いまは高品質果実の多品目少量消費へと移行している。
 温州ミカンは、ひと昔には主要な果実として位置づけられ、消費量も多かったが、他の品目が増えてきたことにより相対的に地位が低下した。さらに、オレンジ自由化やバブル経済の崩壊による不景気が追い打ちをかけ、今日のように価格が低迷している。
 実は、生鮮果実の1㌔当たりの購入単価は上がっているのだ。1965年では100円だったのが、現在は400円ほどで購入しているとのデータがある。しかし、年間の購入数量はと言うと、ピークだった1975年の約200㌔から、今は半分の100㌔となり、消費者が食品の中で生鮮果実を買う割合が減っていることになる。
 つまり、生鮮果実の購入金額自体は大きく下がっていないのだが、高級志向で他品目少量消費傾向が高まって、消費自体が減少しているということになる。

産地が価格形成できれば  

 ミカンの流通・消費は、スーパーなどの量販店が中心だが、スーパーとしては開店時間やチラシなどの関係で、定時・定量・定品質の物を仕入れたい。これを実行するため、従来のセリから、予約相対取引きが徐々に拡大している。
 そのためスーパーは、品質に対する客観的評価が可能な状態の確立を求めている。バイヤーでさえも、正確に目利きできる人がそんなにいるわけでもなく、教育する時間もコストもないのだが、そんな中、スーパーでは品質などを一目瞭然で数値化できるような商品、産地を獲得しようとしているのだ。
 バブル崩壊後、ミカンの販売価格が低迷しているが、消費者も不景気で生鮮果実の購入を手控えている。だからスーパーとしても、なるべく安い販売価格にしたいし、安く仕入れたいという本音がある。
 だからといって価格をスーパーの言いなりにされるのではなく、産地が主体的に市場を形成する努力が大切だ。産地としては、消費者やスーパーに説得力のある商品、つまり安全・安心をアピールでき、バラツキのない高品質の物を作るのが一番の近道だ。消費者の高級少量志向にも対応できるだろう。

こだわり栽培は高値で  

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 ミカンのこだわり栽培の一例に、イオンのプライベートブランド「グリーンアイ」がある。化学肥料や農薬を極力抑えたブランド商品で、生産・流通・消費のどの段階からでも、生産者や栽培履歴を特定できる仕組みが整っている。
 イオンのホームページの「グリーンアイ」を開いてパスワード入力すると、誰が、いつ農薬を散布したかなどが一目で分かるようになっているのだ。それを「信頼」とウリ文句にしている分、もちろん設定した価格も高くなっている。
 鳥インフルエンザやBSEなど食の問題が多発したことにより、消費者の安全・安心への関心はますます高くなっている。当然、生鮮果実も同様なのだが、ワイドショーや新聞などの情報が交錯する中、正確な情報をどこで得れば良いかが消費者は分からない。だから、農産物の生産工程が開示された「グリーンアイ」が消費者に受けているのだ。
 こだわりという面で、もっと極端な例として、ミカンを手で選別している産地がある。機械化が進む時代に逆行していると思ったが、その担当者は、「機械選別は実がすれたりして品質が劣化してしまう。手選別は、ミカンの取り扱いが優しく、何といっても『手作りミカン』を全面に打ち出せる。規格や糖度の統一も大事だが、手作り感をPRする方がもっと大事だ」と話していた。当然、農薬や肥料なども一定の基準を定めており、そのミカンは相当な高価格で取り引きされているという。
 このように、生産現場のこだわりが、消費者や市場に受けている好例がたくさんある。そして、こだわり栽培は高値で売れるというだけでなく、生産者自身のモチベーション(生産意欲)のアップにもつながる。今後は、産地もこのようなこだわり栽培がどんどん増えてくるだろう。

市場情報にアンテナはって  

 日園連がまとめた極早生ミカンのマルチ被覆率を都道府県別に見ると、トップは熊本県、次いで長崎県で、約3割ほどの被覆率。和歌山県はわずか5%程度どまりだ。光センサー選果機の導入率についても熊本県が非常に高く2002年では67・8%であるのに対して和歌山県は20%程度で、ここでもすでに差が生じている。
 ミカンが価格低迷する要因の一つとして極早生が言われる。すべてではないが、量販店は内容の良くない極早生を市場に出してほしくないと思っている。消費者がシーズンの最初に食べたミカンでその後の購入量が決まるからだ。極早生は早出しの分、価格は比較的高いが、その割に味が良くないせいで全体のミカン消費に悪い影響が出ている傾向だ。
 今後、不良系統や低品質の極早生を淘汰する方向づけや、ミカンの糖度を最低10・5%にする取り組みも、まず産地全体で基準をしっかり決め、生産者が守ることが大事だ。そうやって初めて良い価格がつくのだし、生産者の所得も上がり、ひいては市場や消費者の信頼も確固たるものになる。
 皆さん自身が消費地に出向くのも大切だ。自分たちの生産物がどのように消費者に買われているのか、機会があれば一般の消費者と直接話をするのも良い。双方の考えや状況、立場を分かり合ってこそ、継続的に買ってもらうことにつながるのだ。
 日産自動車を復興させたカルロス・ゴーン氏は、モチベーションが高い職場ほど最終的に良い結果が出るという。農業についても同じで、生産者のモチベーションが高い産地ほど品物のレベルも高い。
 販売面についても、生産者個々がJAに要望するばかりではなく、生産者自身が組織で討議して方針を立て、販売促進に積極的に関わっていくことが必要だ。
 ぜひ、皆さんでJA紀南のブランドを盛り上げていただき「紀南ミカンなら買っても間違いない」と言われるようがんばってほしい。市場の情報、量販店や消費者のニーズを把握するのはJAだけでない。生産者も常にアンテナを張って、多様な消費形態に対応することがこれまで以上に求められている。(文責は編集部)

●講師プロフィール●
細野 堅治(ほその けんじ)九州共立大学経済学部助教授。大阪府立大学農学部園芸農学科を卒業、同大学院農学研究家園芸農学専攻博士前期課程修了。主な研究に「和歌山県における温州ミカン産地の形成・展開と環境における産地対応」、「九州園芸産地における野菜マーケティング」などがある。その他著書や学会報告など多数。

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