JA紀南広報誌

2003年8月号p18-01

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森の復活を夢見て  

 皆さんは「いちいがし」という木をご存知だろうか。カシ類の一種で常緑の高木である。昔は、熊野の地の代表的な木で、里山などに普通に生えており、実は食料となり、材は堅く櫓などにも利用されていたようで、利用価値の高い木であった。
 しかし現在、近辺では神社林の一部に見られる程度になった。この木を含めたカシ類(アラカシ、ウバメガシ、ウラジロガシなど)を中心に植樹活動を行っている団体がある。その名は「熊野の森ネットワークいちいがしの会」。熊野の森を復活させようと平成9年12月から活動しており、私も縁あって発足時から参加している。
 昔から紀州は木の国と言われるほど自然が豊富な所である。今でも確かに緑は多いし、比較的自然には恵まれている。しかし山々をよく見てみると、スギやヒノキの植林地が目立つ。地域によっては7割から8割が植林地だという。そのうえ近年では、間伐、枝打ちなどの手入れもされず放置されている植林地も少なからずある。
 それが原因かどうか定かではないが、私が住んでいる町を流れる富田川は、少し雨が降り続くと水かさが急に増え、日照りが続くと瀬切れが起こる状況だ。また、山に実のなる木が少なく食べ物がないからか、サルやシカが里に出没し農作物に被害をもたらしている。
 私は自然について勉強しているわけではなく詳しいことは分からない素人だが、これらの原因の一部に植林の多さがあるのではないかと思っている。森が壊れると川が病み、海にまで影響があるという。森はたくさんの生き物を育み、水を蓄える大切なものである。
 こんな熊野の森を、少しでも元に戻そうと活動しているのが熊野の森ネットワークいちいがしの会である。植樹や苗作り、間伐の代わりとしての巻き枯らし、少しでも自然のことが理解できるようにと観察会や勉強会も開いている。
 簡単に木を植えるといっても、これがなかなか難しい。植樹しても半数以上がうまく着かず枯れてしまう。着いたとしてもシカや野ウサギに葉を食べられ、ひどい場合は木の皮まで剥がされて枯れてしまう。1割残れば良い方である。
 難しいことは承知のうえでやっているとはいえ、思うように育ってくれない木を見るたび無力感を覚える。でも1㍍近くに成長した木も2、3本ある。これからこの木が成長し立派な森になるまで50
年かかるか100年かかるか気の遠くなる歳月が必要である。
 メンバーの一人は「この活動はすぐ結果が出るものではない。50
年、100年先の夢を追うバカな人間がおってもええやないか。ぼちぼち行こう」と言う。私もライフワークとして仲間と地道に活動していきたいと思う。100年先の夢を見ながら……。(家高靖久)

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